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2026.08.25

レッドフォックス株式会社 代表取締役 横溝竜太郎さん|“戦う人”が、“生き抜く経営者”になるまで

営業支援や顧客管理を「現場で働く人」に届けるプロダクト、cyzen(サイゼン)。それを擁するレッドフォックス株式会社で、厳しい局面から会社を立て直し、V字回復へと導いたのが代表取締役の横溝竜太郎さんだ。ヤマハ発動機からグロービスを経て、レッドフォックスへ。かつては「勝つこと」に強くこだわる“戦う人”だった横溝さんは、なぜ社員を最優先に置く“生き抜く経営”へとたどり着いたのか。連載「山本が、会いに行く。」第2回は、かつて cyzen のエンタープライズ展開を共に戦った“戦友”、横溝さんを訪ねた。聞き手の山本自身も、当時この現場に立っていた一人だ。だからこそ、聞ける話がたくさんあった。

① 出会いと関係性

“戦友”は、どうやって生まれたのか

山本と横溝さんの出会いは、山本が自らの会社を立ち上げてまもない頃にさかのぼる。山本のかつての上司が独立して関わっていた場を通じて、二人は引き合わされた。ちょうどレッドフォックスは、cyzen の単価を大きく引き上げ、エンタープライズ企業へと売り方を大胆に変えていく——そんな勝負どころにあった。

「サービスをきちんと語れて、コンサルまでできる人が必要だったんです」と横溝さんは振り返る。白羽の矢が立ったのが、山本だった。やがて山本は、外部の立場でありながら CSO(最高セールス責任者)として、レッドフォックスのセールス業務全般に責任を持つことになる。単価を引き上げながらエンタープライズを開拓するという、難易度の高い局面。二人は肩を並べて走り抜けた。

「一、二回お会いして、すぐにお任せしたいと思いました」と横溝さん。数字のプレッシャーも、うまくいかない夜も、分かち合った。うまく回りはじめた手応えも、壁にぶつかった悔しさも、同じ景色として覚えている。だからこそ、二人の間には他では代えがたい関係が残った。

「山本さんとは、戦友だと思っているんです」——横溝さんのこの一言に、この日の対話のすべてが詰まっていた。

② 経歴と、今の仕事

大企業を飛び出して。ヤマハ発動機から、レッドフォックスへ

横溝さんのキャリアは、大企業から始まる。ヤマハ発動機の本社で、140億円規模のプロジェクトや海外の大きな仕事を任され、成果を出してきた。「本当に感謝しているし、楽しかった」。会社も、上司も、仲間も良かった。それでも40代を前に、ある想いが日に日に強くなっていく。

「このままヤマハで勤め上げる人生も、素晴らしい。給料もいいし、周りも優しい。でも、一度きりの人生。大企業を飛び出して、自分の手で旗を上げられたら——」。安定を手放してでも挑戦したい。その気持ちが、横溝さんを動かした。

グロービスで MBA を取得し、2016年、レッドフォックスへ加わる。ヤマハという大企業から一転、レッドフォックスは中小・スタートアップだ。「入った時から、自分にとっては圧倒的にチャレンジングな環境でした」。スピード感も、意思決定の距離も、大企業とはまるで違う。整っていないからこそ、自分の力が試される。だからこそ、燃えた。

入社後の横溝さんは、マーケティング、インサイドセールス、クロージング、そして営業までを一気通貫で担い、cyzen のリブランディングを主導。単価を引き上げ、エンタープライズへと売り方を変える大きな転換を、現場の最前線で推し進めた。前述のとおり、その営業の舵取りを外部から支えたのが、CSOとしての山本だった。

対話の様子。
▲ 対話の様子。

レッドフォックスと、cyzen(サイゼン)について

レッドフォックスが提供する cyzen(サイゼン) は、外で働く人——フィールドワーカーのための、位置情報を活用した営業支援アプリ。建設・建築をはじめ、現場を持つ企業に強い。

「知る人ぞ知る」プロダクトながら、導入企業は700社弱にまで広がっている。

▶ cyzen(サイゼン):https://www.cyzen.cloud/

③ 大事にしているもの

代表として、大事にしている3つのこと

横溝さんが代表として大事にしていることは、3つに集約される。

ひとつは、「いい状態で、会社を続ける」こと。「株主も、お客さんも、社員もいる。まず絶対に、いい状態で継続させる。それが経営者の、一番の仕事だと思っています」。売上や利益はもちろん、そこで働く人の人生も背負っている。だから、続けることそのものが目的になる。

「いい状態で、会社を“続ける”。それが経営者の、一番の仕事だと思っています。」

── 横溝 竜太郎さん(レッドフォックス株式会社 代表取締役)

ふたつめは、社員を大切にすること。「社員が楽しく働けている。だからお客様にいいサービスができる。いいサービスを受けたお客様が、サブスクで応えてくれる。この循環をつくることが、何より大事なんです」。心理的安全性を保ち、「会社のミッションを、他人事ではなく“自分ごと”にできているか」を問い続ける。

みっつめは、小さくてもビジョンを掲げること。「外で働く人たちの働き方を、もっと楽しくする。その旗は、下ろさない」。規模が小さいからこそ、掲げる旗の高さで人は集まり、踏ん張れる。

そしてもう一つ、横溝さんが徹底しているのがスピードだ。「とにかくレスポンスを速く、早く仕事をする。突き詰めれば、それに尽きます」。意思決定に時間のかかる大企業にはできない速さこそ、スタートアップの武器であり、お客様からの信頼に直結する——大企業とスタートアップの両方を知る横溝さんだからこその実感だ。

④ 変わった価値観と、そのきっかけ

“戦う人”が、“生き抜く経営者”になるまで

もっとも、横溝さんは最初から「社員ファースト」の経営者だったわけではない。むしろ逆だった。「元々の僕は、“戦う人”でした」。プレイヤーとして数字をクリアし、表彰される。その快感が原動力だった。「戦う集団、プロフェッショナル集団をつくりたい——ずっと、そう思っていました」。厳しさも辞さず、勝つために前へ出る。それが横溝さんのスタイルだった。

転機は、代表就任だった。前体制の任期満了のタイミングで、横溝さんは代表を引き受ける。だが、会社が置かれていたのは、売上も赤字も同じ規模という、極めて厳しい局面だった。「まず、生き延びる。あのときは、それしかなかったんです」。

自らの報酬を含む固定費の抜本的な見直し、オフィスの縮小——痛みを伴う決断を、次々と下していった。華やかな成長戦略ではない。会社を、そして仲間の生活を守るための、泥臭い意思決定の連続だ。「とにかく、ガッツと気合と根性。新しく入ってくれた仲間と、生き抜くことだけを考えていました」。崖っぷちを、チームで越えた。

その経験が、横溝さんの価値観を根っこから変えた。プレイヤーとして“自分が”成果を出す喜びから、社員・株主・お客様の満足を“背負う”経営者へ。「自分が、というより、働いてくれているメンバーや、みんなが成果を出してくれると、嬉しい。背負っているものが、大きくなったんです」。

“戦う”気持ちが消えたわけではない。ただ、その矛先が変わった。個人の勝利ではなく、チーム全員で「生き抜き、続ける」こと。かつて見直した社員の待遇も、いまは以前の水準以上に戻した。「本当に、感謝しています」——その言葉には、危機を共にくぐり抜けた者だけが持つ実感がにじんでいた。数字は V字回復し、会社は安定して成長を続けている。いまレッドフォックスは「ネクストレベル」を合言葉に、チームの力で一段上を目指す。

“戦う人”は、“生き抜く経営者”になった。それは、敗北でも妥協でもない。より多くのものを背負えるようになった、成長の物語だった。

終わりに

戦友の再会は、次の挑戦の約束

取材の最後、横溝さんは山本にこう告げた。「山本さんは、僕にとって戦友なんです」。cyzen のエンタープライズ展開を、外部のCSOとして共に立ち上げた日々。うまくいくことばかりではなかった、あのつらい時期を一緒に戦い抜いたからこそ——「だから、そこはやっぱり、伝えたいんです」と、横溝さんは言葉に力を込めた。

その想いに、山本も応える。「これから、事業をもっと広げていきたい。そしてまた改めて、いろんな形で一緒に何かを——」。かつて同じ現場で数字と向き合った二人の再会は、そのまま、次の挑戦の約束でもあった。

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